第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
伏黒が“しゃれこうべ”のある祠へ向かおうとした時、ちょうど虎杖達がこちらへ戻ってきた。
「お、よかった、入れ違いにはならなかったな」
「虎杖!?“しゃれこうべ”は壊せたのか?」
「まだだ。ちょっと厄介なことになっちまっててさ……」
“しゃれこうべ”の祠を周囲を確認した虎杖達が打ち明けた状況は、決して良くなかった。
「祠に3人見張りがいて、全員ショットガンを持ってる」
「おそらく鳥撃ち用のショットガンでしょうね」
伊地知の推察にうなずいた虎杖は額を掻く。
「周りには細い木ばっかで身を隠せそうな場所がなくってさ、“しゃれこうべ”まで近づけねーんだ」
「それで、伊地知さんの車を呪力で強化して、祠まで強行突破、“しゃれこうべ”だけ取って離脱するのはどうかって話してたのよ」
いくら焦っていても、さすがにその作戦には無理があると分かるくらいには、伏黒の判断力は鈍っていなかった。
ただ単に自動車に呪力を篭めるという簡単なレベルではないのだ。
「オイ、無理だろ、それ。車の強化は誰がやるんだよ?」
「アンタだけど?」
「……静止物ならともかく動く物は無理だぞ」
「なにも中身までまるっと強化しろなんて言ってないわよ。外側だけならいけそうじゃない?」
「フレームと窓だけならどうにかなるかもしれねぇが、タイヤを撃ち抜かれたら終わりだろ」
「タイヤもどうにかしなさいよ!」
「無茶言うな」