第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
村人達もすぐには追いつけない程度の距離を稼いだところで、伏黒は虎杖に電話し始めた。
『伏黒?村の結界が消えたけど、大丈夫か?』
「虎杖、今どこだ!?」
『結界が消えたから何事かと思って、村の方に向かってる途中だけど……?』
「すぐ引き返して“しゃれこうべ”を壊せ!生贄の儀式が前倒しされて、結界消失と同時に呪霊が村の神社に現れた。生贄はなんとか引き離したけど、渡辺が呪霊の足止めに残ってる」
『だったら渡辺の方に行くのが先じゃね?』
「“しゃれこうべ”を破壊しないと呪霊にダメージが入らねぇんだよ!村の連中は“しゃれこうべ”の情報が俺達に漏れたと知ってすぐに儀式を前倒したから、“しゃれこうべ”の方にも何人か妨害工作してるかもしれねぇ、急げ」
破壊するのが遅れれば遅れる程、なずなが呪霊に取り込まれる危険性は高まる。
焦燥感から普段とは違う切迫した伏黒の声に、虎杖も只事ではないと感じ取ったようだ。
『分かった、すぐ“しゃれこうべ”を壊す。伏黒はこっちに来てんのか?』
「俺は伊地知さんに生贄を預けてからそっちに行く。それまでに“しゃれこうべ”を破壊できてたら渡辺の所に引き返す」
『壊したら俺達も村へ行けばいいんだな?』
「生贄の護衛も必要だから、釘崎は伊地知さんの所に向かわせてくれ」
生贄の護衛が少し手薄になるが、おそらくなずなが多少なりとも負傷しているので、救出次第伊地知の所へ下がらせればなんとかなるだろう。
虎杖の二つ返事を聞き、通話を切った伏黒は足早に村外れへ向かった。