第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
底冷えする殺気がなずなに向けられる。
白稚児だけではない。
周囲の白い幼子達からも強烈な殺気を感じる。
―わたしたちは うばわれた―
―たいせつな いのちを うばわれた―
―このばしょまで うばうのは ゆるさない―
これまで舌足らずな言葉遣いだった白い幼子達が口を揃えて呪いの言葉を歌い始める。
―災いあれ―
―災いあれ―
―私達から奪ったオマエ達に災いあれ―
それは強大な呪力となってなずなにぶつかってきた。
「かはっ……!」
巻き上げられたと思ったら地面に叩きつけられる。
呪言ではないが、幼子達の声でこの空間の呪力がうねり、すべてなずなに襲いかかってくるようだ。
逃げ場がない。
翻弄されるなずなに白稚児は満足そうに笑った。
「ボクの術式“白魂揺籃”はねぇ、印をつけた人間の魂を白くするの。そして白い魂はここに縛られる」
「魂を……?」
「魂を白くすると、肉体は口と手足が利かなくなるの。そうしてできた白い魂はひたすら純粋にあの村を呪う。ここはその呪力で満たされているから、どんな攻撃も思うまま」
なずなを襲う呪力が一段と重くなる。