第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
突然の乱入者と生贄の子供が消え、完全に塞がった穴を見て、白稚児はつまらなさそうに口を尖らせた。
「オマエ、生意気ね」
「こうでもしなくちゃ、あなたを祓えそうにないでしょ」
生贄の子が外に出たことで、なずなはより自由に動けるようになった。
術式の中和もうまく働いているし、足止めするのに不安な要素は今のところない。
外にいる皆が白稚児の仕掛けを解くことができれば、また結界を割って知らせてくれるはずだ。
最悪のパターンは足止めに失敗して、白稚児が生贄の子を取り込んで結界を張り直されてしまうことなので、自分がどれだけ時間を稼げるかに懸かっている。
なずなが真っ直ぐ白稚児を見据える傍らで、白い幼子達はお互いを抱き寄せ、恐怖と絶望が入り混じる目でなずなを見ていた。
―あたらしい おともだちじゃなかったの?―
―どうして?どうして わたしたちから うばうの?―
―やめて おねがい ころさないで―
その悲痛な声に胸が痛くなるが、なずなが立ち止まることはない。
白稚児をこちらに集中させるべく鬼切を振るう。
腕や脚、更には首まで落とすが、やはり白稚児には効果がない。
自分の頭を拾ってケラケラ笑っているだけで、それも首の切断面に据えると何事もなかったかのように繋がっていく。
それでもなずなが斬りつけると、白稚児は片目をすがめた。
「無駄だって分からないの?……あーあ、うっとうしいんだから。皆、コイツから奪ってやろうよ」
その一声で周囲の空気が一気に冷え込んだ。