第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
……なんとなく、そんな気はしていた。
生贄の子と同じ化粧、同じ白装束、同じ年頃。
ここにいる幼子達が過去の生贄なら、彼らには何の罪もない。
「あぁ……」
そんな子の腕を落としてしまった。
まるで本物の腕を切ったかのような感触に手が震えてくる。
―なんで?どうして こんなひどいこと するの?―
―いやだ!いやだ!たすけてぇっ!―
泣き叫ぶ声が耳に、頭に、何より胸に突き刺さる。
愕然とするなずなに白稚児が声高に言い放った。
「それなのにオマエは容赦ないねぇ!この子達は見捨てて、一番新しいイケニエだけ助ければいいんだ?ヒドイねぇ!」
「ちがっ……わ、私は……ただ……ご、ごめ……っ」
謝罪の言葉が出かけて、はたと止まる。
この子達には本当に申し訳ない。
咄嗟の判断だったとはいえ、何の悪気もない子の腕を切ってしまったのだから。
でも……
……これじゃあ誰も守れない。
私は何のために強くなりたいと思ったの?
五条先生に特訓を頼んだのはどうしたかったから?
皆を守れるようになるためでしょ……!
泣く子供とそれを慰めようとしている子供達を映す目から涙が溢れてくる。
「ごめん、ごめんね。私、どうやってもあなた達を助けられない……」
だって、この子達の肉体は何十年も前に失われていて、もう取り戻せない。
私にできることはこの先、同じような生贄を出さないようにすることくらい。
だから……