第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
ここが白稚児の領域ならば、まだやりようはあるのだ。
なずなの頭の中にあるのは少し前の五条との特訓。
簡易領域ができかけて、無下限呪術を中和し、攻撃が届いたあの時。
思い出せ、五条先生の術式を中和した時のあの感覚を……!
私は刀……
白稚児の術、その効果を斬る一振りの刀……!
触れていることしかできなかった鬼切をわずかに握り込む。
あの時の感覚を全身に行き渡らせるように。
鬼切の呪力がゆっくりと水のようになずなを包んだ。
すると、今までが嘘のように身体が軽くなっていく。
よし、いける……!
すかさず飛び起きて白稚児の胸に鬼切を突き立てた。
過たず心臓を貫く。
が、
「あはっ、すごぉい!オマエ、動けるの?」
「な、んでっ!?」
胸を貫通し、背中から鬼切が飛び出ているにもかかわらず、白稚児は楽しそうに目を細めている。
呪霊にとって心臓は弱点、祓えなくとも大きく力が落ちるはずだが、白稚児には全く効いていない。
この結界に引き込まれる前、渾の爪や牙が通っているのに、傷が消えていたのと同じような印象だ。
「無駄だよ、ここにいる何人もボクを傷つけることはできない。前に来た術師も同じだったわ。攻撃が効かないと分かった時の顔ったら!」
何か仕掛けがあるんだ……!