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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と



―こっちのこも おともだち?―


いつの間にかなずなの背後にも白い幼子が立っていた。
そのすぐ傍には白稚児の気配もある。


「そうねぇ、そうかもねぇ?」

―そうなんだ おねえちゃんも はやくおいでよ―


幼子がなずなの背中に触れる。


「ぁっ……!」


その瞬間、ぞわりと背筋が粟立った。
身体の内側を冷たい手でべっとりと触られたような、言いようのない不快感だ。


―あれ?ひらかない……?―

「この子はまだ馴染んでないから」


白稚児はなずなの前に歩いてくると、膝を折って顔を覗き込んでくる。


「重たいでしょ?オマエも早くその肉殻を脱ぎなよ。とっても軽くなれるよ」



肉殻を脱ぐ?

それは肉体を捨てるということ?


そんなことしたら死んじゃうんじゃ……!




ハッとして生贄の子に目を向ける。


早く出ておいでと言われ、背中を触られていた。
そして割れた背中から出てこようとしている何か。



あの子は今まさに肉体を捨てようとしているということだ。

このままではただそれを見ていることしかできない。



考えろ……!

どうすれば動ける……?


どんなに力を込めても、呪力を流してもどこも動かせない。



足掻くなずなを白稚児が面白そうに眺めている。


「無駄だよ、重い肉殻を着たままだと動けない、ここはそういう場所なの。ここで自由に動けるのは魂だけ。ここに来たら最後、肉殻を脱ぐまで野垂れたままよ?」


肉体を枷にして魂を引きずり出す術式!?


結界の中がこんな景色になっていることといい、ここは白稚児の生得領域、しかもこれほど強く術式効果が出ていることから、完成された領域に近いのだろう。


おそらく、生贄の子が完全に肉体を捨ててこの領域の住人になってしまった時、白稚児は再び村に強力な結界を張る。



それまでに何とかしないと……!



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