第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
なずなの一言だけでその結論を導き出した伏黒は、険しい表情で遠巻きにしている村人達を睨む。
すると、なずなが慌てたように前に出てきた。
「本当に大丈夫だよ……!」
「オマエなぁ……っ」
こんな奴らを擁護する必要なんてねぇだろ。
まして傷つけられたのなら尚更。
俺だったら間違いなく見捨てるけど、渡辺は守ろうとするんだろうな。
それこそ自分がどれだけ傷ついても。
それが彼女の良心だから。
これ以上はなずなが恐縮するだけだというのは分かっているが、それでも伏黒は村人達に怒りを向けることをやめたくなかった。
「そ、それより今はあの子を連れて逃げないと!」
「っ、そうだな」
なずなに促された伏黒は舌打ちしたい気持ちを抑え、生贄の子がいた方に目を向けた。
が、そこには誰もいない。
どこに行った!?
「見ぃつけた」
不気味な程に無邪気な声と共に背後から硬い手が伸び、なずなを捕まえた。
白稚児の骨の手がなずなの首と頬に伸びる。
すると、触った場所からうっすらと鎖のような模様が浮かんできた。
呪霊のマーキング!?
外から強烈な力で押さえ込まれたかのように身体が重く、なずなは身動きどころか声も上げられない。
「渡辺っ!!」
伏黒が伸ばした手も掴むことができず、なずなは白稚児と共に結界に引きずり込まれた。