第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
2人とも思い切り水を被り、なずなの左腕を包んでいた火も消えた。
「渡辺!大丈夫か!?」
「ぅ、うん、だ、大丈夫っ」
すぐに返ってきたなずなの返事としっかり治っていく腕を見て安堵する。
正直、心臓が止まるかと思った。
なずなを影から引き上げ、胸を撫で下ろしたのも束の間、今度は彼女の格好に目が行っていまう。
なずなの制服は左腕から肩にかけて完全に燃えて無くなってしまい、火傷の治った腕が肩まで出てしまっている。
首の近くまで布地が無くなっている部分もあり、少しでも服がズレると下着が見えてしまいそうだ。
しかも頭から水を被ったため、髪から雫が滴っており、余計に危うい。
そんな際どい姿を大勢の前で晒すということになるわけで……
一瞬だけ、なずなのあられもしない姿を想像してしまい、顔が熱くなる。
「っ……濡れてて気持ち悪ぃかもしれないけど、コレ着てろ」
慌てて自分の制服の上着を脱ぎ、なずなに着せた。
袖や裾が余ってしまい、彼女との体格差を再認識させられて顔に集まる熱は消えないが、先程の姿を晒すよりはずっといい。
伏黒は自分でも気づかぬ内にホッと息を吐いていた。