第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「そんなものオマエの出まかせだろう!先代からの口伝で、生贄は火あぶりにする決まりだ!!」
村人達はなずなの言葉になど聞く耳持たず、足元にある石を拾うと、なずなに向かって投げつけてきた。
「邪魔するな!」
「今すぐ出ていけ!」
「やめっ……!」
すぐさまなずなの前に渾が割って入り、村人達が投げつけてくる石から守ってくれる。
しかし、いくら渾といえど全方位から飛んでくる石の全ては捌ききれず、なずなも生贄の子を抱えているため、思うように動けない。
なんとか生贄の子だけは守ろうと抱き込むと、石はなずなの額の右側に当たり、血が流れた。
ヂリと鋭く痛むが、気にしなくても大丈夫だ。
いずれ治る。
だが、村人達がこうも殺気立っていては、呪霊が現れても思うように戦えない。
この場を離脱することが最優先だ。
そう判断した次の瞬間、渾が大きく遠吠えした。
と、同時に村を覆っていた結界が霧散し、強烈な呪いの気配が現れる。
「あれぇ?イケニエはどこかなぁ?」
突如聞こえた小さな子供の声に全員の目が向いた。
肩に届かない程度に切り揃えられた白い髪、白拍子の衣装に身を包んだ幼子……のように見えるが、瞳孔は縦長に切れ、小さな口からは猫を思わせる牙、袖から覗く手は骨しかない上に指先は鋭く尖っている。
間違いない、これが白稚児と呼ばれていた一級呪霊だ……!