第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「オマエ達はどうだ?マーキング方法は分かったか?」
「多分これだってのは分かった」
虎杖が村の子供達から聞いたことを話し、途中足りないところは野薔薇が補足する。
「……俺達が聞いたのはそんくらいだな。“しゃれこうべ”の場所は教わったから、これから行こうと思ってる」
儀式開始までには戻ってこれるだろう。
幸い自分達が知らない内にマーキングされているという事態はなさそうだ。
そのことにはとりあえず安堵し、呪霊祓除の作戦を立てる。
生贄を連れて離脱するのは4人の中で一番生贄に近づけそうななずなとその影に潜伏できる伏黒。
虎杖と野薔薇は儀式前に村に入れるように待機、儀式が始まる時に玉犬に合図してもらい、生贄を連れて逃げる2人と入れ違う形で村へ侵入し、木片に火をつけ、呼び出した呪霊と戦う。
「あとは俺達が加勢できそうなら加勢する、くらいか」
「あんまりガッツリ決めてもその通りになんないでしょ。このくらいアバウトでいいんじゃない?……それより、アンタは早くなずなの所に戻んなさい!」
野薔薇も1人残っているなずなのことが心配で、伏黒を急かした。
伏黒も長居するつもりはないので、踵を返し、村への道を戻っていく。
バレないように隠れながら戻らないとと思案しながら村への道を急ぐ。
が、村までもう少しというところで不意に渾の遠吠えが聞こえてきた。
異常事態を知らせるその声に伏黒の足が止まる。
そして、村を覆っていた結界が消えた。
「何だっ!?」
何故突然結界が消えるんだ?
……いや待て、この結界は時を経ると弱まる。
一番弱まる時……つまり消える時は儀式が開始された時じゃないか?
今夜10時に儀式開始というのは偽り?
それとも何かがあって開始を早めた?
理由は分からないが、今、生贄の所には渡辺しかいねぇ……!
もし儀式の場に呪霊が現れたら、1人で生贄が取り込まれないように立ち回らなければならない。
「クソッ……!」
やはり自分が離れるべきではなかった。
伏黒は悔しげに唇を噛み、弾かれたように走り出した。