第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「何だって?」
伏黒も怪訝に思って近づいてくる。
なずなの視線につられて子供の首あたりに目を落として瞠目した。
「これ、呪霊のマーキングか!?」
子供の細い首にはうっすらと鎖で締め上げられたような痕が二重三重についている。
そこから感じられるわずかな残穢。
この痕が村人の仕業ではない証拠だ。
「村の他の人にもあるってことかな?でも村長さんにはなかったよね?」
「気にして見てなかったから絶対とは言えねぇけどな……虎杖達と合流した時にも聞いてみるか」
服で隠れている場所にマーキングがある可能性もあるため、ここで考えても埒があかない。
玉犬が戻ってくるまでそう時間もかからないはずなので、伏黒達は部屋の調査を再開することにした。
生贄の子供の部屋の間取り図を書いたところで、外から玉犬の声が聞こえてきた。
一度玉犬の術式を解いて、再び室内で呼び出す。
玉犬に託していたメモには虎杖達からの返事も書かれており、6時集合で問題ないという内容だ。
手製の間取り図も広げて、玉犬が示した監視カメラの位置に丸をつける。
「出入口以外には監視カメラが3台か、死角になりそうなのはこことここ……出た後のことも考えるとこの窓が良さそうだ」
伏黒がカメラの死角になる窓の1つにトンとペン先を置いた。
「じゃあ静かに雨戸を開けないとね」
「ああ」
ここを出て隠れながら移動することを含めると、集合時間の6時まであまり時間がない。
脱出候補の窓は奥まった場所にあり、出入口からは直接見えない箇所だ。
早速作業に取り掛かることにする。