第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
呪霊を呼び出すためにあの子を火あぶりになんてさせたくない……!
その一心でなずなは必死に古い書物の文字を追う。
生贄と火が独立していた証拠。
かがり火でも松明でも小枝でも、なんでもいい。
何か……何かないか!?
―舞台に使う木を清め―……
違う。
―生贄は滝壺にて身を清め―……
これも違う、けど、これから火あぶりになる人をわざわざ滝に打たせるのは違和感がある。
―舞台に生贄を上げ―……
こっちも違う。
―榊を焚き―……
あった!
「ここ!榊を燃やすって書いてあるよ!えっと……舞台の前に設置するみたい。生贄の人も儀式前に滝行してたから、多分燃え移ることもなかったと思う」
「よし、生贄と火は必ずしも関連付いていなくてもいいってことだ。なんでもいいから火をつけて呪霊の出方を見ることはできる」
「よ、よかったぁ……」
ホッと胸を撫で下ろしたなずなに伏黒も表情を緩めて安堵する。
「一旦ここまでだな。虎杖達と合流するのは6時くらいでいいか」
儀式の詳細、呪霊の出現タイミングはほぼこれで間違いないだろう。
6時に集まって情報共有しておけば、夜10時の儀式開始には十分間に合う。
残る問題は村人に見つからずにここからどう出るか、だ。
「出入口以外にも監視カメラがあるかもしれねぇ。まずはカメラに映らない玉犬にメモを持たせて虎杖達に伝達、カメラの配置も探らせる」
いざという時のためにあらかじめ玉犬は建物の外で待機させてある。
窓の隙間からメモを差し出す程度なら余程性能の良い監視カメラでないと捉えられないし、怪しまれることもないだろう。