第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「ここに来る前に神社前の広場に簡易の舞台があったな。それが儀式に使う舞台ってことか」
「でも松明はなかったよね?何に火をつけるんだろう?」
「燃やす物が湿気らないように儀式の直前に持ってくるとかは考えられるが……」
少し戻って前準備の部分も読んでみるが、特に松明といった火をつけられそうなものは書かれていない。
「も、もしかして……!」
ある可能性に思い当たったなずなが文字を辿っていた指を止め、顔を上げる。
「どうした?」
「あの……ぶ、舞台に直接火をつける、とか……」
「なっ!?」
なずなの推察に伏黒も息を呑んだ。
だが、確かにあの舞台は組んだ丸太の上に板を載せただけの簡易なものだった。火種があれば全て燃える。
生贄を火あぶりにして呪霊を呼ぶということか。
「ど、どうしよう……!」
これでは生贄となる子供は助けられない。
なずなは動揺を抑えきれず、声が震えている。
「まだそうと決まったわけじゃない。もう少し古い書物に遡ってみてくれ。昔は火あぶりにはしてなかったかもしれねぇ」
「う、うん……!」
儀式というのは時を経るにつれて、簡略化されたり、統合・分割されたりするものだ。
昔の儀式は今と違ったということも十分あり得る。