第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
解読は難航しており、数時間経つというのにまだ1冊目。
儀式の内容が書かれた部分を探している状態だ。
とてもではないが全てを読んでいる時間はないので、まずはページ全体を見て“儀式”という単語があれば読んでいく、といった具合で調べている。
そして、伏黒はようやくその箇所を見つけた。
「……あった、ここだ」
……―儀式デハ生贄ヲ社ノ舞台ニ上ゲ 火ヲ以ツテ捧ゲ奉ル。―……
火……?
火が呪霊を出現させるトリガーか?
肝心の呪霊のことはもう少し先に書いてありそうだ。
「こっちにも似たようなことが書いてあるよ。舞台の火……うーん、松明かな?“火を灯して白稚児様を呼ぶ”って」
「……渡辺、ソレ読めるのか?」
なずなが読んでいたものは、伏黒の手元にあるものより古く、書いてある文字が何なのかも分からないくらい達筆で書かれている。
「えっと、一応ね。読む速さは全然だけど……古文は読めるようにしておけって、お父さんに言われてて……」
呪符や呪物は古文書にあるような文字で書かれているものもあり、将来術師を目指すのであれば必須だと中学生時代に父から教わっていたのだ。
なずなもまさかこんな所で役に立つとは思いもよらなかった。
まだ儀式の全容は掴めないが、読み進めれば解明できそうだ。