第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
―獣道の先、村外れにひっそりと佇む小さな祠―
そこからは時折子供の笑い声が聞こえてくるという―……
・
・
・
―もうすぐだね―
―どんなこなんだろう?―
―たのしみだね―
くすくすと笑う者。
手を叩いて喜ぶ者。
嬉しさのあまり踊り出してしまう者。
彼らは重い肉殻を脱ぎ捨て解放された白い子供達。
―はやくあいたいな―
―おはなししたい―
―まずはこえのだしかたを おしえてあげないと―
―みんなで おしえてあげるのよ。はじめておはなしするのは たいへんだけど、とてもうれしいことだから―
やわらかな月明かりが注ぐ中、白い綿毛をつけた穂草が揺れ、仄白い蝶が舞う楽園で、子供達は楽しく遊び、おしゃべりして悠久の時を過ごす。
そんな彼らにとって喜ぶべき一大事が起ころうとしていた。
―もうすぐ わたしたちの あたらしい おともだちが くるんだね―
彼らはまだ見ぬあの子の羽化を心待ちにしている。
・
・
・