第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
白稚児!?
いきなり祓除対象の呪霊と思しき名前が出てきて虎杖も野薔薇も瞠目する。
「“しゃれこうべ”は村の宝物なんだって。だれかが引っ越してきた時とか、赤ちゃんが生まれてきた時にしか行っちゃいけないんだよ」
「誰かが引っ越してくると行けんの?」
「うん、そこでよろしくってシラチゴさまに言うんだって」
「ちがうよ、自己紹介するんだよ」
少し年上の男の子が指摘すると、更に上の女の子が首を横に振った。
「違う違う、“しゃれこうべ”にさわるのよ。妹が生まれた時にそうだったもん」
しゃれこうべに触る―……
もしかするとこれがマーキング方法かもしれない。
「ねぇ、“しゃれこうべ”ってどんな形なの?」
「丸くて袋に入ってたよ。お姉ちゃんの手くらいの大きさ」
女の子は両手を丸めてこのくらいの大きさと見せてくれる。
子供が生まれた時と他所から引っ越してきた時に触るということは……
「この村の人は皆“しゃれこうべ”に触ってる?」
うん!と元気よく返事をする子供達とは対照的に虎杖達の表情は固くなっていく。
―村人全員がマーキングされ、呪霊の結界を自由に出入りすることができる―
パズルのピースがひとつ埋まった。
しゃれこうべに触ると呪霊にマーキングされるとみてまず間違いない。
「“しゃれこうべ”はどこにあんの?」
「ダメだよ、お兄ちゃん。近づいちゃいけないもの」
……なかなか鋭い。
だが、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「ほら、ちゃんと場所分かってないと知らねー内に近づいちまうかもしれないし」
「むぅ……ぜったいに近づいちゃいけないんだからね!」
「絶対に近寄らないって約束してするから!」
口を尖らせる女の子に心の中で謝りながら、虎杖は頼み込む。
女の子も根負けして、村に帰る道とは少し違う道を進み始めた。
「こっち、この先に行くと、小さなお家があるの。神様のお家なんだって。そこに“しゃれこうべ”があるわ」
女の子が指差す先には小さな獣道がある。
その先に進むのは子供達を村まで送り届けた後だ。