第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
案の定、虎杖は高学年の子にも気に入られてしまい、やっと解放されたのは下校時間を30分以上過ぎた頃だった。
無垢蕗村から通う子はさすがに帰らないと親が心配するという時間になり、名残惜しむ子供達と分かれ、虎杖は野薔薇と一緒に無垢蕗村の子供達と帰路を急いだ。
「だいぶ遅くなっちゃったな、伏黒達から何か連絡あった?」
「まだ何も。伊地知さんのとこにも連絡は来てないみたい」
2人は子供に聞かれないように耳打ちする。
夕方に一度集まることになっているが、その集合時間の連絡が伏黒から来るはずなのだ。
まだ連絡がないということは向こうも有力な手がかりは掴めていないということか。
こちらもそろそろ本腰を入れて聞き取りをしなければ。
「なぁ、無垢蕗村ではお祭りとかやんの?」
「お祭り?……あるよ!みんなで盆踊りするの」
「盆踊りはちょーっと違うかな・・・じゃあ、何か言い伝えとかはある?」
虎杖の質問の意図が分からないのか、子供達はキョトンとしている。
「他の村の子はやってなくて、この村だけでやってることとかない?」
それにも心当たりがないのか、子供達は首を傾げるばかり。
これには虎杖も困ってしまう。
どうすれば、と悩んでいると、少し後ろを歩いていた野薔薇が更に踏み込んで尋ねた。
「村にいる神様とか、声を出しちゃいけない場所、近づいちゃいけない場所とかはないの?」
「うーん……それって“しゃれこうべ”のこと?」
「しゃれこうべ?」
「そう、“シラチゴさまのしゃれこうべ”、村の外にあるの」