第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「見ての通りですが、この村には学校がありません。ここの子供達は隣町の小中学校に通っています」
一旦伊地知の待機場所に戻った虎杖と野薔薇は、村の子供から情報を得るために彼らが通学している学校のことを尋ねていた。
伊地知はタブレットに地図を表示させて隣町の学校を示す。
ここから歩いて30分程度の距離、子供の足だともっとかかりそうだ。
「これ、毎日通ってんの?大変だなぁ」
「でも好都合でしょ。これだけ離れてれば質問もしやすいんじゃない?」
感心する虎杖に対して、野薔薇は冷静に分析している。
できれば村の大人に邪魔されたくないので、学校を出た直後、隣町にいる段階での接触を狙うことにする。
「低学年の子も上級生の授業が終わるまで学校で待って一緒に帰ってきているようなので、下校時間は4時頃ですね」
「何して待ってんの?」
「空き教室で宿題をしたり、校庭で遊んだりだと思いますが……」
「うーん、学校内じゃ遊びに混じるのも無理かなー」
「完全に不審者じゃない」
腕組みして考え込む虎杖を野薔薇がたしなめる。
小学校の校庭で遊んでいるところに制服姿の高校生が乱入してきたら、騒ぎになること間違いなしだ。
大体、高校生はまだ授業を受けている時間帯なのだ。そんな時間に行ったら不良に違いないと追い出される。
虎杖がダメかなぁと肩を落としていると、伊地知が助け舟を出した。
「この小学校には警備員もいませんし、教員の数も決して多くありません。もしかすると教師の目を盗んで学校の外で遊ぶ生徒もいるかもしれません。そういった子供に声をかけてみるのはどうでしょうか?」
「それ、いいかも!」
どこの学校にも大人に逆らいたいやんちゃな子供が少なからずいるものだ。
まずはそういう子供に話を聞いてみよう。