第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
そしてもう一つ、小さな書庫のような部屋に数々の本が残されていた。
この中に儀式に関して書かれたものがあるかもしれない。
「と、とりあえず書庫の本を調べてみる?」
無理に外に出て見つからないように行動しながら儀式の手がかりを探し回るより、その方が神経を使わずに済む。
おずおずと尋ねてきたなずなにそうだなとうなずくと、2人は早速書庫へ向かった。
書庫の本棚に並ぶのは古い書物ばかりだが、伏黒はその中でも比較的新しそうな物を手に取って開いてみる。
「クソッ、読みづれぇ……!」
中身を見て思わず悪態が出た。
それもそのはず、紙が少し傷んでいるのもそうだが、何より文章が漢字とカタカナで書かれているのだ。
文章自体も堅いというか、文法が今と少し異なっている。
目が滑りそうになりながら読んでいくと、思った通り、この村と生贄に関することが書かれているようだった。
「本じゃなくて古文書だね……」
伏黒が読んでいるものよりも古そうな本を開いたなずなは困り顔になっている。
よく考えれば当然だが、前回の儀式が80年前、当時は戦前だ。
その前は更に100年程遡る……となると江戸時代?
「携帯が繋がるなら写真送って伊地知さんにも手伝ってもらったんだけどな」
伊地知はこういう古文書解読にも慣れているし、解読に精通している人員とも迅速に連携してより早く中身が判明するはずだが、村の結界内だとそう簡単にはいかない。
こちらから送るのも向こうから返信するのも時間と人手がかかってしまう。
「前準備とかは無視していい。儀式本番で行うことだけ集中して探すぞ」
「わ、分かった」
お互いにうなずくと2人は手元の本に目を落とし、集中し始めた。