第27章 断章 明くる日のお話 ※
もうすぐ11時になる頃、伏黒はキッチンに立ち、朝食のベーコンエッグを焼いていた。
すると寝室からバタバタと大きな音がして、リビングのドアから勢いよくなずなが出てくる。
やっと起きたか、と伏黒が顔を上げると、あちこち寝癖をつけた寝間着のなずなと目が合った。
そんな無防備な姿も可愛いと感じるのは惚れた弱みか。
その姿を見ることができるのは自分だけだと思うと、笑みが漏れてしまう。
「おはよ」
「お、おはよう、恵くんっ、あ、あの、私、昨日……っ!」
「ちょっと落ち着け」
ワタワタと慌てるあまり、しどろもどろになるなずなを苦笑しながら宥める。
しかし、時計を見たなずなは更に顔を青くした。
あと10分程で11時だ。
こんな時間まで寝入ってしまった。
「ご、ごめんね、こんな時間まで……!」
「俺も起きたのは10時過ぎだったし、そんな変わらねぇよ。朝飯……つってももうすぐ昼だけど、食うか?」
彼だって昨日まで任務だった上に、自分が真夜中に起こしてしまい、疲れているはずなのにと自己嫌悪に陥っていると、不意になずなの腹からぐうぅと情けない音が鳴った。
なずなの顔がみるみる赤くなっていく。
それを見た伏黒は更に苦笑を深め、フライパンの方に目を落とした。
「すぐできるから、待ってろ」