第40章 悔いのない人生を
行動範囲が狭くなった、ススキや石だらけな荒れた墓地と大小の枯れた木と、違和感のある青い薔薇の低木のある寂しい空間。
私含め三人となる頃に、私の母は朽ちた棺桶に腰を降ろし、もう少しで空っぽになりそうな、叔母の呪力を遥か彼方の奈落を広げる事に回す私達を眺めてた。
「……鶴姉は枯れた彼岸花。亀姉も同じかな~…?」
「ススキよりかはマシかもね、花だしいくらかは鮮やかでイイじゃん。そうだ、どうせ枯れるなら紫陽花とかがいいな~!」
「は?枯れた紫陽花なんてカッサカサで茶色くて固まってまるでゾンビの脳みそみたいじゃない、」
「っはー…、デリカシーの無い妹っ!」
姉妹喧嘩とも言い切れない、たまに見るやりとりを目の前で見せられて苦笑いが溢れる。仲が良いのは分かるよ、姉妹なら尚更。ただそれが自分達の呪力が尽きた先、いわゆるここでの亡骸の姿で揉めるのを聞いて、こっちとしてはどうも突っ込めないセンシティブな話題でさ……。
叔母のひとりの鶴は先に呪力を無くし、この世界へと縛られた呪力から開放されて枯れた彼岸花へと変化した。私の意思でどうこう出来るわけじゃないけれど、少なくとも関わりがあって目に留まるような物のひとつになるくらいの存在だったって事なんでしょ。
ヨミが石ころになったように、興味が無い・関わりのないという人は散歩中に目もくれないような姿になる。そう思えば初代はかつて父に愛されたくて、認めたくてあの目立つ大きな木を生やしたのかも知れない……由来は聞いていないから、本当に禪院家の一人の魂があの木なのかも確認出来ていないけど。
「あー……呪力がすっからかんになるー…」
そんな疲れたー、とかお腹すいたー、みたいな感覚で呟くけれど実際は消える寸前の叔母。
察してるのか、肩に私が手を置いたままに彼女はゆっくりと歩いて、枯れた彼岸花の側にと立った。
「どっちが綺麗なのか、あの世で教えてよ?龍子」
「んー……まっ、あの世で会えたらね~?」