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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第40章 悔いのない人生を


しっかりとした子…いや、大人になったなあ、なんて末の娘を誇りに思う。
兄弟が多いから、とか仕事が忙しいからって事もあり、末の子をあまり甘やかせられなかったな、とちょっとだけ後悔してたんだー……。
一番下の子だからこそ共に過ごす時間も少なかった。その子が立派になった事はとても誇らしい事……実際に生きてその姿を、鎹が愛した、そのお腹の子の父親を見てみたかったけど。それはもう、生きた者たちの人生であって私達は口出しも干渉も出来る立場じゃないって事を知ってる。

鎹の側で手を伸ばし、私よりも少しだけ背の高い娘の頭を撫でた。
出来るだけ優しく優しくと心がけ、その後に引っ込めた手をもう片手で覆い隠す。感覚は分からないけれどきっと娘に触れるのは最後。きっとこの子はこの領域……生と死を繋ぐ、名前の通りの"鎹"がやって来ることはないのだから……。

私と悟の間を繋ぐものは更に次の世代へと繋いでく。私達が死んで終わり、じゃなくて血を混ぜ合わせ、新しい時代へとの架け橋、今度こそ生と死ではない、初代や今来ている娘の名前通りの鎹(かすがい)として孫、曾孫、玄孫と私達よりも前の血を未来の時代へと繋げていく……。

だったら悟と同じく現世で私もやるべき事をやった方かな。なら、今更多くの言葉は要らないでしょ、死者の言葉なんて古い考えだってのは知ってるよ…領域内で散々見てきたからね。

鎹の子は更に次の世代にと繋いでくれるのなら、私と悟が生きた意味はあったんだから。私は、私達は子供に全てを託そうと思う。

最期に鎹は涙ぐみながら笑顔を浮かべた。

「──じゃあね、お母さん」

『ん、いい人生を……、鎹』

消えていく彼女。領域を去ってからは別に何も変化はないけれど、私は最後の拡張された地続きの世界をもう一度限界まで縮小させていく。
もう、ここには訪問者は来ないはず。あの子は生まれた子供にも"領域展開は使わない事"と教え込むと思う……。
このままの流れで私含む二十八人居る取り残された魂の持つ呪力を開放していけばここの領域は呪力による縛りから囚われた魂達が解き放たれるんだ。

記憶の奥底に今を生きてる子供を焼き付けて私は引き続き、同じことを繰り返していった。早くこの先祖達の罪を解き放てるように、と。
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