第40章 悔いのない人生を
腕の中に捕らえられながらも、悟は私から顔を上げて子供達をひとりひとり見ていく。
三男坊は悟を見習って教師を目指すことを聞き、父の背を見て育ってる事を知り。
──知らなかったなあ、父の職を将来の夢にしてただなんて。
そうだよね、まだまだ将来についてを語り合う前に私は死んでしまったんだから…。
悟は双子を見る。双子は今年で二十八。悟と出会った時の彼の年齢で、確かにあの頃の面影を残す息子とその年齢頃の私に似てる。似てるのは良いんだけれど、呪術界の双子となると色々と心配事があるんだ。呪術界の視線だって厳しいものもある…とても行き辛い私達の双子の子供達…。
……それも彼は対策済みらしい。
ふっ、と微笑んで双子から私を見下ろし、優しい表情を見せた。
「ずっと心配だったろ?小悟と小春の事。どうしても双子ってのは呪力に悩むものだ。
これについては昔から傑がせっせと作ってた、人里離れた場所の迫害された呪術師の集落に住まわせてる。あそこならふたりは生き延びて安心だし、呪術師として子孫が開花しようとも、非術師として続いていこうとも生きていける。
だから心配は要らないよ、呪術界もパワーバランスが変わって次の世代が頭角を出しててね~……、僕も相変わらず強いっちゃ強いけど最強っていうにはどうかな?くらいにアップデートが出来なくなってきたし。
次の世代を育てること、子孫達のこれからの人生を見据えての事……出来る限りの事はやったんだ、後は僕達の手の中から離れていった、みんなの人生さ。親であるキミは先にリタイアをした、だから老後を楽しむのに僕は大切なハルカも居ないしね……。
だからもう、今の僕には生に執着はないんだ……」
ククッ!と昔からよく聞く笑い声を聞いた。耳元で愛おしそうに囁く悟は遠回しに死にたいと言いながらも恐怖や未練を感じられない。
「……あとは僕は最期の未練となる、オマエの元に逝きたいって思っててね?」
『なにを…言ってるの……私が、悟を……。死を返すって、そういう事でしょ?』