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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第40章 悔いのない人生を


「ハルカ、」

私の母が私の事を呼んだから振り向く。その視線は先程まで白装束の一人が立っていた場所。今ではまばらにススキの生える寂しい姿をその穂先から根本までを視線で撫でるように見つめてた。

「お疲れさん……。私の出番の時はどんな姿になるんだろうね…、」

自分で決められるものじゃないしなあ…、とあちこちに転がる石や根を張るススキを眺めて首を傾げる。
私がこうしたい、ああしたいって呪力の無い魂の後の姿を変えられるのなら、その人物に良く似た人形だとかにしただろうけど、どんなに思ってもその姿にはならず。

……まあ、そんなに心を込めて思うような人達じゃないから神様仏様って何かに縋るくらいに祈りはしないけどさっ!
そんな私の気持ちを知ってるのか、心が読めたのか。母は苦笑いをしつつ、お揃いの白髪をさらさらと片手で梳き、指先に絡めて遊んでる。

「……あんた、本当に大事な人以外はどうでもいいっていう風に、結構無関心な所あるものね。私は少なくともここに生えたようなススキ以上だといいねえ~……」

『ははっ、なにそれ。ススキ以上って……』

そこまで無関心じゃないと思うんだけれど、と言い返したいですが。
……でもさ、確実では無いけれど仄かに察してる所はある。
初代である鎹はよく大きな枯れ木を眺めてた。自身が消える事を決めた時も父上、と呟いていた事も……。

最期まで聞くことは出来なかった、低木となった初代の魂の成れの果て。
"無"であった空間での魂は姿を変えつつ、呪力は空間維持が出来るほど余ってないから少しずつ呪力で維持の出来なくなった土地は狭くなっていく。それと一緒に"物"となったものもそれでようやくここから新たなステップを踏み出せるんだろうけれど、生きている時に格好良いと憧れた私の母の呪力を使用して、使い切った後の魂の形はどういう物になるのかは未知数。少なくとも、さっきススキになってしまった女とは思うものが違う。
母を見て私は笑った。

『きっと、ススキなんて言わずに鎹みたいな木になるよ』
「……だと良いわね」
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