
第40章 悔いのない人生を

396.
悟や子供達はあまりにも若すぎるままに居なくなってしまったあの子達…姉妹の、失ってしまったその悲しみを乗り越え、少しずつ前を向いて生きているんだ……。
そう、今を生きている家族達を想いながら、ここに来ない事を前向きに元気に生きているのだと思いながら。会えない寂しさを抱え、私は母や叔母達と時々会話を挟みながらに見えない足元奥の奈落を深く深くと広げていく。
見える世界といえば地続きのループした世界。
少しだけ遠くに私達が見える状態に領域が狭くなった時、もっと縮めてしまえば万華鏡のように多重影分身でもしているように見えるのかと思ったけれど、それは更に遠くに客観的に見える私達が近くなるにつれ、やがて周囲に薄く霧が立ち込め始めて……。
──頭上は沈まぬ夕日があるのに、地上では遠くが見えない霧が立ち込めるってとっても変な感じだな。
親戚の一人が試しに消えることを覚悟して霧に突っ込めば、反対側から出てきたのだからかなり範囲は狭まってきたのは確かな事。どこかの終わりと始まりの微妙な境界線がはっきりとしないように霧が隠してるんだと話し合ってそう決定付けた(正解は誰も知らないけれどそう思い込んだ)
ここまで来たら、呪いを連れてくる領域展開での仕留める為の空間の意味も失われてくる。
それでもまだまだ棺桶だとか墓石だとか散らばってるメインとなる大きな枯れ木を中心とした領域は残っていて、この作業も残りわずかと感じながらもまだまだ掛かりそうで…。
──あと何人を開放すれば良いんだろう?
片手は呪力を解き放っていてその反対の空いている手で指差して、残りの人数を数えてみれば三十一人。私を含めたら三十ニ人。ここに取り残されて、次の生へと輪廻が出来ない彷徨える魂が死しても意思を持ち生き続ける罰を受けている人数。
長くここに留まればそりゃあ恨みも深まるわ…、とひとりへら、と苦笑いして、私が触れていた女の肩がぐずぐずと崩れ始める。
表情は見えないけれど私が呪力を使い切った女は確かに「ありがとう…」と呟いて、また一人がここに縛り付ける自身の呪力不足で開放されて姿が崩れていった。
枯れた大地、多くの春日の女の場合はススキの姿に変えられている。たまに石ころの時もあるけれど……私の意思で姿を変えられるわけじゃないし……。
──これでここに取り残された女達の残りは私以外の三十人となった。
