第40章 悔いのない人生を
『皆、元気にしてた?』
「うん、元気元気。お母さんもここでは変わってないみたいだね…?」
『そりゃあ、死んだ時の姿のまんまだもん。いつかはみんなが私を追い越していく日が来るよ…』
好きな人が出来て結婚して。子供が出来、中年になって、子供に子供…つまりは孫が出来てさ?まさかの事態で死なないで、大好きな家族に囲まれて年老いて逝く……──。
私が出来なかった、そんな人としての幸せで生涯を閉じて欲しい。
だから、そんな幸せな終わりの為に長生きしてね、と想いを込め夕陽の頭を撫でてみた。触る感触がないからこそ、その力加減に気をつけて。
優しく撫でられているのかなぁ…、と撫でながら長男坊を見ればすっかり悟と並ぶ頭の並びがなんとも可笑しい。
片手で口元を隠し、ぷっ、と笑うと言葉に出して居ないのにむっとした顔をした悟。私の様子に何かを察したのかすぐに頬をぷくっ…と膨らませてた。
「なにさ、久々の再会に笑って。どうせ僕よりも蒼空が大きくなったって言いたいんでしょ?」
『えっマジ?やったじゃん、蒼空~』
娘を撫でる手をつま先立ちして息子の頭に。わしわしと撫でる私に困ったように笑いながら少しだけ膝を曲げて撫でやすくしてる所が高ポイント。気配りの出来る子なんだよね、うちの自慢の息子は!と久しぶりに笑顔が溢れた。
「あーっ!僕の特権!ずるいずるいっ、夕陽は女の子だから分かるけどなんで蒼空撫でてんのっ!?」
『子供が先、あんたは後っ』
「やー!」
『やーって……あんたいくつよ!?いい加減我慢なさい!』
鎹が制服な所を見るにまだ五十代と思われる男が、買い物中にお菓子を買ってもらえない!というようにやだやだやだとダダを捏ねてる……。子供達は大人しくしてるってのに悟の態度を見ればどっちが子供なんだか、と久しぶりに呆れた。
長男長女を撫でた後に次女達、双子と視線を向ければ察したチベスナ顔と小悟が悟に対してお先にどうぞ、と気を遣っていて、優先された彼は表情豊かにとびっきり嬉しそうな笑顔を浮かべてる。
悟はこういう所だよな~……と、このやり取りも懐かしくなるわ…。