第40章 悔いのない人生を
395.
何人もの領域内に閉じ込められた死者達の呪力を使って、見えない地下深くの奈落を広げ…──。
ゆっくりと世界が縮まって来てるのか、地続きのはるか遠くに人の集まりだとか枯れた木を見かけた。それはすぐ近くに居るような見覚えのあるような集団。
数人があちらに向かい、背後からその向かったはずの数人がこちらにやってくる。見えていた集団とは私達の事であり、確実に目に見える形での領域の縮小についての成果が現れているのは分かった。
実績を見て感じる度にひとり、またひとりとたくさん居る女達から魂が呪力の縛りから開放されていく。その彼女たちの立っていた足元には行き場を無くした魂の形……多くの場合はススキが生えて無の世界に色褪せたものが追加されてくんだ。
それでも女達はやっと五十人を下回った所で休まずにまだまだ私が頑張らなきゃ全てを終わらせられない。
──そして二度目となる、乾いた空気を満たす時がやってきた。
私がかつて領域展開をした際に、ここに閉じ込められた女達が一斉に見てたのはこういう事なんだろうな、と満ちた空気のその出没地点に視線を向ける。その呪力が満たす感じっていうのは、まるで春の息吹のような、爽やかさを感じるから。
あれからどれくらいが経過したんだろう?死んでからのあの一回目ほどはあまり時間は経ってないようにも感じるけれど、正確には直接聞かなきゃ知り得ない事。
『……久しぶり』
一段と大きくなった、もう子供ではなく大人になってしまった、私と悟を繋げた子供達。
夕日に照らされた家族達が固まってやってきてる。末の子の鎹が制服を着てるのを見て、全員高専に通った……という事となるかな。
高専で色々と学んで、座学の他に実習で経験を積むから学校内と高専外での現場で、生きる力を荒療治だけど獲得してさ…。それで死ににくい生きるための技術を積み重ね、誰かと恋に落ち、子を産んで……次の世代に繋げられたなら生きた意味があったと少し誇りにも思ったり。