第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
悟が当たり前のように二桁産ませるプランを言えば硝子が呆れたように「ハルカの腹を休ませてやれよ」とツッコむ。
うん…そうなんだよなあ~、今はもうお腹の中はからっぽ。しばらくして落ち着いたら私のお腹の中に新たな住人が仕込まれるんだ……。
またこれまで体験した体の不調と戦うのか…と、悟を見ていると視界の中、傑がこちらに近付きそっとタオルに包まれた蒼空を私へとゆっくりと手渡してきた。静かに眠る顔を見て起こさないように受け取り、ぽかぽかとした体温をタオル越しに触れる場所から感じた。
小さいながらも生きようとする意思、その生命の重みを実感しながらに決してこの子を簡単に攫われてしまわないようにしなきゃね…、母親として。新しい宝物として……。
「しかし、あの五条が父親ねえ……、ハルカはともかくさぁ…」
「悟がやらかしたらいつでも相談しなよ?私達だけじゃなく、夜蛾学長も七海も皆協力すると思うからさ」
「オマエら僕をなんだと思ってんの??」
くす、と笑ってベッド隣に座ったままじっと子供を優しい瞳で見ている硝子。寝顔を覗き込み思い出したように私の顔を見上げた。
「そう言えば何故ハルカはここを選んだんだ?評価の良い産婦人科なんてもっと近くにあったろ?」
硝子の言葉に確かに高専から距離のある場所のこの病院を選んだ理由を振り返ってみる。
始めは知り合いに見られないように、という疑惑や事実を隠したい理由で高専の関係する人達の来ないだろう、離れた場所としてここを選んだという事。調べた時に評判も良かったし。硝子もいくつか知ってる病院で「確かにここは良いかもね」って当時言ってたし。
その後犯された時の子供では無いと分かり、いざ産む場所として別の病院も含めて調べてやっぱりここがイイ!と結局最初から最後までここにしてしまった。
その一番の理由は…──。
小さく硝子にサムズアップをしてニヤリと笑ってみせてさ…?
『最初は人目を避けるのもあったんですけど。ここの評判として何よりも食事が美味しいって評価が凄かったからです!』
「食いしん坊か」