第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
心配性というか、面倒見が良いなあ、と思いつつ少なくなったジョッキを呷る。目の前の席の歌姫も同じくビールを飲み干し、残った僅かな泡だけが底面へとゆっくり流れていった。
こうして見ると最初の注文他に鶏と大根の煮物やらモツ煮なども頼んで食べて、ビールもおかわりして相当楽しんでた。お腹が超膨れた、ちまちまとお新香のカスを箸で摘んで食べて、「さて、と」という言葉に今日の飲み会の終わりを知る。
……めっちゃ楽しかったなあ…!これ、京都に居る間にせめてもう一度来たいんだけれど。
「よし!じゃあ今日はここまでにしましょう。明日は休みって言ってもハルカのところにあいつが来るんでしょ?」
上着を羽織りながら時計を見ている歌姫。時刻は9時を過ぎている。「どうせ朝から来るわよ、あいつ」その言ってる意味が理解出来る。飲んで酔っ払って爆睡してたら、それをバレた瞬間に悟にお酒禁止!とか言われちゃう。
翌日休みならいいじゃんね?別に記憶を無くすほど酔ってるわけじゃないんだし。
バッグを引き寄せて、名残惜しいなあ、と一緒になって使用済みの皿を重ねて一箇所に纏める。
『……うん、またここ来ましょう!歌姫さん!』
「ふふ、良いわよ?予定がなければハルカからの誘いに乗るわ、あっ、あいつはナシで頼むわね?」
『ハハハ……了解です!』
サムズアップして返せばふふん、と強気に笑う歌姫。
今日は奢る、と歌姫に奢られて、ほろよいの酔っぱらいテンションの私達は肩を組み、陽気に歌いながら酔っぱらいテンションで高専へと帰っていった。