第4章 息も止まるくらいに
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その日は、雨で。
一護と一緒に、私のマンションでのんびりと休日を楽しもうと…色々と買い込んできた。
「美穂子、鍋どこにある?」
一護にキッチンで呼ばれて、問いかけられた質問に私は首を傾げた。
「さぁ?」
「は?」
一護がぴたりと動きを止めて、まじまじと私を見る。
その視線が、何の冗談を言うんだ…とでも語るようで、私は困ったように眉を潜めた。
別に冗談で首をかしげたわけじゃないのに。
普段、私の家…というかこの部屋は、ハウスキーパーがいて。
食事の準備とか、そいう家事全般は彼にお任せしてる。
え、ハウスキーパーが男って珍しい?
仕方がないでしょ、実家で雇っている人がこっちにお手伝いにきてくれている感じなんだもん。
執事っていうには、マンションの一室でしかないこの部屋
じゃ仰々しいし、そんなに仕事なんてないもの。
ハウスキーパーっていうほうが無難な感じよ。
まぁ、何にせよ…家事全般はその男に任しているの。
だから、キッチン道具がどこにしまっているかなんて知らないし、知る必要もなかったんだもの。
「鍋なんて何に使うの?」
「何…って、今日はうどんを食うんじゃねぇの?野菜とか肉を煮込まなきゃ食えねぇだろ」
一護はスーパーの袋に入った野菜とか鶏肉を見せて言う。
「…………」
「お、おい? まさか…マジで言ってるとか?」
少し焦ったように言う一護に、私はこくん、と頷くと。
一護の唇が引きつった。
「お前、普段…何食って生きてんだよ」
「出された食事を食べてるわよ」
「つまり、誰か作ってくれてるってことか…」
「うん。祐二がね」
「…………は?」
「え?」
たっぷり数秒の間があって。
一護の眉がぐぐーっと寄った。
あ、あれ?なんで、不機嫌になったの?
私は目をぱちくりさせて、ぽんと手を打った。
そっか。鍋の位置がわからないことが理解できて、困ったってことか!
「い、今から祐二に電話して場所聞くわ」
そうよ、ついでに使いそうなものを祐二に聞いて一緒に場所を聞いておこう。
私はうんうん、と頷いてキッチンに背を向けた。
「ちょっと…待てよ」
「え、一護?」
がしぃぃ!っと効果音が聞こえてきそうな勢いで肩を掴まれて、私はびっくりして振り返った。