第1章 恋の味を教えよう
一護と付き合いだしたのは、二週間前の日曜日。
きっかけとなった言い合いは覚えてないが、せっかく友達たちと遊びに出かけていたのに、途中で一護と会って、喧嘩になった。
巻き込まれないように友達は帰ってしまうし。
その時はなんて最悪な一日だろう!と思ったものだ。
それが。
まさか、一護の嫉妬からきた喧嘩だったなんて。
それ以来、二人はお互いの気持ちを察して。
なんとなく付き合おうか、という話になった。
それだからだろうか。
(一護は、私のこと好きなのかな)
こんなことを言うのは失礼な気もして、口にはできないけれど。
そんな不安が美穂子を襲う。
なんとなく流れで、今付き合っている彼女もいなかったから興味で付き合いだしたのかもしれない。
だから、一護は美穂子と手を繋いだりすることも…ましてやキスだってしてくれないのかもしれない。
美穂子がそんな不安を持っているところに、啓吾の軽口。
不安は一気に膨れ上がった。
「それ、本気で言ってんのか?」
「……うん」
不安なのは本当だ。
美穂子は小さく頷いた。
すると、一護はため息をついた。
美穂子はびくりと肩を震わす。
「-…ごめんね、一護」
美穂子は謝ることしかできなかった。
きっと呆れてしまったのだろう。
こんな中途半端にも見える関係を終わりにしよう、そういう風に言われるのかもしれない。
美穂子はぎゅっと目をつぶった。
「今更、遅ぇ」
「ご、ごめ……、っ!?」
一護の声に美穂子は顔を上げると、すぐ目の前に一護の顔があった。
同時に、唇に何かが触れた。
「い…ちご?」
「なんだよ、まだ不満か?」
「え、あ…あの…っ、んん!?」
少し眉を潜めて、一護の唇がまた美穂子に触れる。
先ほどの一瞬掠めるようなキスではなく…しっとりと唇がぴったりとくっつくほどに押し付けられる。