第20章 呪胎戴天
真っ暗な世界。
目を開けたら、身体が軽くなってた。
虎杖くんの呪力以外、全部流したからかな。
傷つけた胸に触れてみたら、傷はなかった。
(魂だけになったから……傷は残ってないのか)
そう理解して、周囲を見渡す。
足元は赤く染まった浅い水が一面に張っていて、私の足首まで浸かってる。
少し視線を逸らしたら、先程宿儺のみせた〝領域〟にあったのと同じ、屍の山がそこにあった。
そしてその屍の山の下、身体を丸めた男子が、蹲ってる。
「虎杖くん」
足を動かしたら、チャプン、と水音がした。
その音に反応して、虎杖くんの肩が揺れる。
「……皆実」
涙で濡れた、虎杖くんの顔が、私に向いた。
「なんで……皆実が、ここに」
死んじゃったなんて、言ったら。
きっと虎杖くんの心を、また傷つけちゃう気がしたから。
「虎杖くんが心配で来ちゃった」
笑って、虎杖くんの目の前にしゃがみ込んだら。
虎杖くんが泣きそうな顔のまま、苦しげに笑った。
「なんで……皆実、こんなときに、笑うんだよ」
いつもあんまり笑わないくせに、って。
虎杖くんが珍しく、私に文句を言ったから。
少しだけ、それが嬉しかった。
きっと、虎杖くんの本音が今なら聞ける。
「もう……呪霊はいなくなったよ」
「……分かってる」
「宿儺が、虎杖くんの腕を治したよ」
「……知ってる」
全部、虎杖くんは分かってる。
だから……知ってるんだよね。
「虎杖くんの心臓を、宿儺が奪ったよ」
わざと、それを教えたら。
虎杖くんがギリっと唇を噛んで、私の肩を押した。