第20章 呪胎戴天
バシャンと大きな水音が響いて。
私の髪が、水面に揺らぐ。
「分かってるよ……分かってる。全部、分かってんだ」
私を押し倒した、虎杖くんの手が震えてる。
「分かってるけど、怖ぇんだよ」
怖くないわけ、ないんだよ。
そんなの当然なの。
でも、虎杖くんは……怖がることを当然と割り切れないから。
「虎杖くん」
だから、そんな辛そうな顔してるんでしょ。
「……私も、怖かったよ」
宿儺と呪霊だけのいる空間は、殺されないと分かってても怖かった。
カッコつけて強がっても怖いものは怖いの。
でも虎杖くんと一緒。
虚勢でも、守りたいものがあったから、その恐怖を選んだの。
私が告げたら、虎杖くんの顔がまた、悲しげに歪んだ。
「じゃあ俺を……責めろよ」
虎杖くんの涙が、私の顔を濡らす。
「オマエに逃げろって言っておいて、守ることもできずに、オマエ置いて逃げた俺を責めればいいだろ!」
苦しいほどの負の感情が、涙に流れて落ちる。
「死ぬのが怖くて、ココから出ていけない俺を……嗤えよ」
本当は責めてほしくないくせに。
嗤ってほしくないくせに。
ほら、やっぱり。
「皆実」
虎杖くんは、自分を責める人じゃん。