第8章 ジム巡り②
時間はあっという間に過ぎた。は飛び跳ねたりタオルを振り回したり、とにかくネズのライブに力を入れていた。エレズンも少し疲れた様子を見せていたが、ライブの余韻なのか、目をキラキラさせて楽しかったと体いっぱいで表現しているように見えた。
「楽しかったねぇ、エレズン!」
「エレ!」
「私も楽しかった!今日もよく眠れそうだね」
「エレレ!」
は足元に置いていたエレズンを抱き上げて、クルリとライブフロアに背を向けた。
「そこのチャレンジャー、どこに行くんですか?」
「ふぇ?!」
と、突然会場内に響き渡る声にはビックリして、先ほどまで見ていたネズを振り返ってしまった。つい反射で振り返ってしまったは、まだライブフロアに立っているネズと目がバッチリ合ってしまった。
ライブが終わった会場は、少しざわついていたはずが、ネズの声でそれはピタリと止み、代わりにたくさんの視線が自分に突き刺さり、は居心地悪そうに肩身を狭めた。
カツン、カツンとネズはライブフロアの階段を降りると、下にいたネズのファンたちは一斉に彼に道をあけた。さながらモーセの滝の様な光景に、は「ひぇええ…」と、小さく声を漏らした
(もしかしたら私以外のチャレンジャーかもしれない)
はそう思って自分の周りを見回してみたが、誰一人その様な人物はおらず、自分のことだと理解すると、一層緊張した。ファンの間をゆっくり歩いてくるネズにドキドキしながらも、は抱き上げたエレズンをぎゅっと抱きしめた。
「お前が最近有名なさん…ですね。」