第8章 ジム巡り②
「愛してーるのエールをあげーる♪」
エレキギターをかき鳴らす音が、スパイクタウンの薄暗い奥から響き渡る。寂れた街には色とりどりのネオンが所々あり、これまで見てきた街とはまるで雰囲気が違った。アラベスクタウンとはまた違った怖さもあるものの、その街の奥深くで人々の声が聞こえる。
「エールをあげーる♪」
「ウィー ラブ スパイクタウン!」
「ネズ! ネズ! ネズ! ネズ!」
一心に声をあげている集団は奇抜なデザインで、顔には真横に赤いラインと黒色のばつ印を入れるほどの熱狂ぶりだ。みんなの熱い眼差しを一心に受けるのは、これまた一段と変わった髪を持つ人物だった。
彼の歌声は信者たちを虜にし、白と黒の派手な髪もよく似合うように見えてくるのだから不思議だ。
「エールをあげーる♪♪!」
その集団の中に、も負けじと声をあげてライブに大いに楽しんでいた。足元にいるエレズンも、彼の歌と音楽が気に入ったのか、ずっとご機嫌でいる。
(あぁ、あぁ…ネズさんの生ライブ見られるなんて///!!!最高!ありがとう!私もエール団に入る!!!!)
はライブ前に買ったネズのタオルを振りまわし、会場を包む歌と音楽に酔いしれながら、エレズンと共に最高の時間を過ごした。
・・・・・
(あれは…)
白と黒の髪を一つ高くまとめ、顔半分を隠れるくらい長い前髪、マイクスタンドを持ち、片足でリズムを刻んでいる男は、いつも自分たちのファンで盛り上がっている会場に、一人歪な存在を見つけた。
(やっとお出ましですか)
ここにくるファンの顔は、男は全てでなくても覚えていた。しかし、今日はその歪な存在の顔は、最近自分の妹がよく話題にしている人物だとすぐにわかった。
意外にも自分の歌で楽しんでくれている姿に最初は不思議に思った男も、彼女が今この時を一緒に楽しんでいてくれてるんだと思うと、もっともっと盛り上げてやろうと思った。