第8章 ジム巡り②
メロンの心配も杞憂に終わり、はあっさりとジムチャレンジをクリアしてしまった。キクルススタジアムのフィールド中央で向き合うからは、疲労の一つも見えない。
「改めまして、あたしゃメロンだよ。ご覧の通り、氷タイプのポケモンでチームを組んでるのさ。アンタ全然穴に落ちてくれなかったね、だから手加減なんて一切しないよ」
これから試合が始まると言うのに、メロンは楽しそうに話しかけてくる姿を見ていると、本当にこれから試合をするのだろうかと思ってしまう。
「…穴に落ちていても、メロンさんは手加減する気ないですよね?」
「!(ああ、この子)」
反対にの表情からは、足湯で見かけた時の緩んだ表情は一切伺えない。自分の着ているユニフォームはしっかり防寒されているはずなのに、表情の読めないの顔に、メロンは背筋がヒヤリとした。
「…準備はできてるってことだね…凍らせて、逃げられないようにして、あとは……お楽しみ」
(メロンさんの雰囲気が変わった…やっぱり油断できないな、この人)
はぎゅっと拳を握りしめた。
さっきまで明るく話しかけてくれていたメロンの目を見ていると、冷たい氷を宿しているかのように冷たい視線だった。
お互い背中を向け、バトルフィールドの外まで歩いた。トレーナーが立つ位置に着くと、改めて向き合った。二人は同時に手に取ったボールをフィールドへ投げた。
「出番よ、モスノウ!」
「ハッサム、行くよ!」
フィールドに出てきたモスノウは、羽が光に当たるとキラキラと輝いた。
反対にハッサムの体は光が当たると、鈍い赤い色がギラリと光る。
「いいねぇ…同じ複合の虫タイプ。だけどどっちが強いかしら」
メロンは逸る気持ちを抑えながら、静かにハッサムを見ていた。
『それでは!キクルスジムのメロンと、ジムチャレンジャーの公式試合を始めます! 始めっ!!!』
レフリーのダンペイが旗をおろすと、とメロンは同時に指示を出した。
「ハッサム、剣の舞!」
「モスノウ、あられ!」
モスノウは羽を震わせると、フィールドにあられが降り出した。すでに舞を舞い始めたハッサムの体に降り出した霰が当たるが、気にした様子もなく続けた。