第8章 ジム巡り②
「彼女と手合わせしたことがあるが、かなり強かったぜ。甘く見ていると痛い目を見るのはキバナ、お前だ」
「…」
ダンデは淡々というと、また視線をテレビに向けた。
試合はポプラさんがトゲキッスを出し、はラグラージからハッサムにチェンジしているのを司会が説明しているのが聞こえてた。
俺はダンデが、が俺さまのジムをまるでクリアするような発言にカチンときた…つーか、今こいつなんて言った?
「…は?ダンデお前今、彼女と手合わせっつったか?バトルしたのか?!」
俺さまはダンデの肩を掴み、顔覗き込んだ。
「キバナ、テレビが見えないから後にしてくれ」
「それどころじゃねーだろ!お前らがバトルしたら目立つだろ!!なのになんの情報もなかった!ローズさんに揉み消してもらったのか?」
「…そうじゃない、俺がに頼んで旅の同行をしただけだ。休みはしっかり取ったしメディアにバレないよう少し変装した」
「はぁあああ?!」
こいつサラッと何言ってんだ…あのダンデが…変装なんて今までしたことがあったか?いつも自慢げにあのスポンサーだらけのマントを着てあちこち行く奴がわざわざ変装?!
キバナはあまりの衝撃にテレビのことなどどうでも良くなった。
ダンデとが自分の預かりしらぬところで進展があり、目の前にダンデは本当に自分の知っているダンデなんだろうかとその横顔を見た。
俺は自分を落ち着かせようと、大きく息を吐いてソファーに座り直した。視線をテレビに戻したが、内容は全然頭に入ってこねぇ。
「…お前、まさか負けてねーだろうな」
「負けてない。でも引き分けだ」
俺はもっとも気になっていたことをダンデに聞いたが、負けていないと知ってホッとした。たとえ公式でなくとも、お前を倒すのは俺さまだ。
『ハッサムの連続バレットパンチでトゲキッスが戦闘不能!やはり今年の注目のトレーナー選手は強い!!追い詰められたジムリーダーポプラ、さぁどうする!!!』
テレビ中継をしている司会者の声だけが嫌に部屋に響いていた。
ダンデは相変わらず真剣に、食い入るように試合を見ている。
なのに俺さまの頭は妙に冴えていた。