第8章 ジム巡り②
はまわしていた腕の力を緩め、リザードンを見上げた。
リザードンもこちらを見ており、エメラルド色の目がとても綺麗だと思った。
「…ごめん、迷惑かけちゃったね」
は申し訳なそうに言った。
リザードンはフーッと息を漏らし、不器用だがの髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。
「バギュ!バギュア!」
リザードンの鋭い爪はの頭皮を痛めることはなく、最新の注意を払いながらも、まるで人間の励まし方を真似しているようだった。
はゆるゆる口が弧をかき、じんわり胸の奥が暖かくなった。
「ふふ…あははは!もうそんなにかき混ぜなくていいよ!」
「グルル」
「あはははは!」
の髪は見る影もなくグシャグシャで、はリザードンの手から逃れようとするが、リザードンも面白くなってきたのか、手が止まる様子がなかった。
ガチャリと、部屋のドアが空き、とリザードンはそちらに目をやると、ハッサムとその腕に抱き抱えられているエレズンだった。
「あれ?ハッサムが面倒見てくれたの?」
「…エレ……エレ〜!!」
すっかり様子が戻ったにエレズンの目からボロボロと涙が溢れた。はギョッとしてエレズンを見たが、ハッサムがすぐに自分の元へ連れてきて渡してくれた。
エレズンはの腕の中に戻ると、ギュッと自分の服を握って顔を胸に埋めてきた。その様子は、まるで母親の愛情を欲しがる赤ん坊に見えた。
は泣いて離れないエレズンをよしよしと頭を撫で、ごめんねと何度も謝ってその頭にキスを落とした。
「…心配かけてごめんね、エレズン…ハッサムも面倒見てくれてありがとう…あなた、子守りできたのね」
「…ハッ」
ハッサムはフイっと顔をそらした。
その隣でジトーっとハッサムを見たリザードンは、フンっと鼻を鳴らした。
はハッサムが不器用ながらも、誰よりも気遣いができることを知っていた。きっと今回もエレズンに手を貸してあげたんだろうとは思った。
「わたし、もうちょっとだけ頑張ってみる。だから…一緒に来てくれる?」
がそう問うと、ポケモンたちはしっかりと頷いてくれた。
このしみったれた夜にさよならだ。