第8章 ジム巡り②
ポケモンが好きだった。
初めてそれを手にした時から、私はずっと心を奪われたままだ。
何度ポケモンが現実にいたらって、本気で考えたことだってある。
それは絶対に現実には叶わない夢で、その物語は私の手の中でしか動かない。
好きでたまらないのに、冷たい画面越しでしか感じられない。
だからこの世界に生を受けたと理解した時、涙が止まらなかった。
グズグズ泣き崩れるに、きっとリザードンは嫌気をさしているに違いない…と思った。顔を上げるのが怖くて、両手でまた顔を隠した。
(こんな弱い私…嫌いだ…こんな私を知ったら……)
一瞬ダンデが頭の中に思い浮かび、はますます惨めな気持ちになった。バトルを心の底から楽しんでいるダンデを思い出すと、今の自分が本当に嫌になった。
すると突然、自分を暖かく包みこまれてはびっくりして両手を顔から離した。
「リザー、ドン…」
「…ギュウ」
自分を優しく包む少し高い体温に、の目からまたジワリと涙が滲み出てきた。もリザードンの体に手を回した。両手はリザードンの後ろで触れ合うことはなく、はすっかり大きくなってしまった相棒を再確認した。
小さい時はしつこいくらい抱いていたのに、今じゃ自分が抱き込まれている。
(あったかい…)
は目を閉じた。
そうすれば、よりリザードンの体温を感じれる気がするのと、この暖かいぬくもりに全てを預けたくなった。
「バギュ…」
なんて言っているのかはわからない。
でもはリザードンの切ない声が、泣かないでって言っているような気がした。
もう画面越しの冷たい感触じゃない。
耳をすませばドク、ドクっとリザードンの心臓の音が聞こえる。
たまらなく愛しくなる存在に、は更に力を込めて抱きついた。
「ありがとう、リザードン…大好き」
「バギュア」