第8章 ジム巡り②
最初はキバナのカードが手に入ればいいと思っていた。
それがいつしか、誰にも負けずにダンデと手合わせするという目標ができた。だからそれでいいと思った。頑張ろうと思った。もっとポケモンと向き合おうって思った。___そう思っていたのに、ポプラに言われては何も言い返せなかった。
「私、何にも成長してないよ、リザードン…このジム巡りをしても、バトルが楽しいって思えないの…勝ったら嬉しいけど、でも今日会った人に甘えてるとか、ポケモンが可哀想とか…ほんと、そうだよ」
は両手を手に当てた。
「またバトルをしたらあの頃みたいに戻れるって思った…でも、私っ…変わってない…あなたたちに無理ばっかりさせてる…!」
自分に心配かけないように、バトル中でも気にかけてくれていた。自分が危ない目に遭いそうになると、私を守ろうとしてくれる。
それが自分はどうだろう?
負けることに怯えている。もちろん自分のポケモンたちが負けるとは考えたことはない。負けないようにずっと旅をして、バトルをして、研究してきた。
誰よりもポケモンの知識が他の人よりあった。それが自分の強みで、どんな相手でも乗り越えてこれた。
「やっぱり…バトルなんて、しなかった方がよかったかな…みんなに無理させくらいなら---」
「バギュ!バギュア!!」
やめたほうがいい、と言おうとした時、その言葉を遮ったのはリザードンだった。は驚いて顔を覆っていた手を解いてリザードンを見ると、リザードンの眉間はもっと酷くなっていた。
「グルルル!バギュ!!!」
リザードンは訴えかけるようにに吠えた。
まるで「ここで折れることは許さない!」と言われたような気がした。何よりこのジム巡りをすると決めた時、もう一度自分と戦って欲しいとお願いした身だ。リザードンは、そんな弱気になっている自分に怒っている。
不甲斐なくて、ジワリと涙が出てきた。
「…リザードン、わたし、怖いよ…みんなが優しいから…わたし、甘えちゃうよ…」
「…バギュ」
「強くなりたいよ…みんなみたいに…貴方みたいに強く、なりたい…」
は目を閉じた。
楽しい思い出はいっぱい思い出せるのに、バトルの時の気持ちがよく思い出せないままだった。
「何を思ってバトルしてたか…もう、思い出せないよ…」