第8章 ジム巡り②
あれからはルミナスメイズの森を3時間も彷徨いながらも、少し先に見えたポケモンセンターを目にして目が潤んだ。ヘトヘトな体に鞭を打ち、はポケモンセンターの中に入ってやっと大きなため息をこぼしたのだった。
その日は疲れ切っていたので、早々に食事を取り眠りについた。
そして次の日、はアラベスクタウンをじっくり見ることができ、感嘆の息を漏らしてあちこち見回った。
「わ〜本当に妖精が住んでるみたいなとこだな〜」
「エレレー!」
「森は怖かったけど、街は綺麗だね!憧れるけど住むのはちょっと…」
フェアリータイプのミブリムが屋根の上で座っていたり、時々草むらの中へかけて行ったり、空にはエスパータイプのマーイーカやゴーストタイプのボクレーも飛んでいた。その光景を穏やかに見守りながら、色とりどりの光るきのこにも、すっかり辟易していたルミナスメイズの森のことなど忘れていた。
「アンタ、全然ピンクが足りてないねぇ?」
「え?」
は突然後ろから話しかけられ、ビクリと体を震わせて振り返った。
そこには自分より背は高く、紫のファーで首元を覆い、ピンクと水色の特徴的なロングスカートを着こなした老年の女性がいた。何より特徴的な大きな鼻に一直線に目が行ってしまった。
はあわあわと慌ててその老婆から3歩後ろに下がった。
「--あ、あなたは…!」
「アンタの試合見てるけど、全くダメだね。やってて楽しいかい?」
「っ…、あはは、何を」
「キバナの坊やが話してたのを聞いてたけど…あたしからすれば自分を押し殺してまでやる意味があるのかいって言いたいね。どんなに強かろうと、ポケモンたちが可哀想だ。甘えすぎなんだよ、アンタ」
「っ…」
「…自覚があるんなら、さっさとやめちまえばいい。それがアンタと、ポケモンたちのためさ」
老婆は言いたいことだけを言い終えたのか、さっさとの横を通り過ぎて歩き去ってしまった。
「…エレ?」
の腕の中にいるエレズンは、黙り込んでいる主人はが心配で顔を覗き込んだ。その表情は、エレズンには分からなかった。悲しんでいるのでもなく、怒っているのでもなく、ただただ無だった。