第8章 ジム巡り②
【ローズ視点】
ここ最近トレーニングルームで精を出しているダンデ君を見ていると、いつもと違うような気がしました。チャンピオンカップはまだまだ先だというのに、今までと違った様子に、わたくしは彼のこの間の休日のことを思い出した。
『ローズ委員長、実はお願いがあるのですが』
珍しく彼からのお願いにわたくしは少し驚きましたが、快く承諾しました。あんなダンデ君はきっと一生見ることがないだろうと思ったのと、ずっと子供ながら我慢をさせてきた彼の珍しい頼み事。
きっと君が絡んでいるんだろうとわたくしは思っていました。
それがどうでしょう、私の想像していたダンデ君はきっと笑顔で出社すると思っていたのですが、希望の休みをとったはずなのに彼の目は闘志に溢れていた。
(何があったかわかりませんが…彼をここまで変えてしまうとは…君と何があったんでしょうか)
わたくしはトレーニングルームのカラスの向こう側にいるダンデ君から目を逸らして歩き出した。わたくしの後ろをついて歩くオリーヴ君は、どなたかと電話
でコンタクトを取っていたが、聞く限り、部下への指示を出していた。
「失礼しました、ローズ委員長」
「いや、構わないよ。例のことかな?」
「はい、捜索隊の一部隊が本日大量の願い星を見つけたと報告がありました」
「そっかそっか。それはいい報告だ」
「目標の数までには及ばないですが、うまくいけばあと数年以内には目標に達するかと」
「数年か…待ち遠しいね」
できることなら今すぐ行動を起こしたいですが、こればっかりは準備を怠ってはいけない。はやる気持ちを抑えながらも、今も自分を鍛えているチャンピオンのことを思うと、自分も子供のようだと思ってしまいました。
「どうして男とはこう単純な生き物なんでしょうか、オリーヴ君」
「委員長がですか?」
「ふふ、そうですよ」
オリーヴ君はどう答えていいかわからないような、困ったような顔をしていた。大方わたくしが単純ではないと言いたいことはわかるのですが。
「目の前に欲しいものがあると、どうしても手に入れたくなる生き物です……男なら」
君もそうなんですよね、ダンデ君?