第8章 ジム巡り②
「ギ……」
長い攻防の末、エレズンはギモーをなんとか倒した。
ギモーはぐったりと地面に倒れ込み、時々麻痺した体がピクピクしていた。
エレズンは息を乱していたが、自分より強いギモーを倒して両手を空に振り上げて大喜びしていた。
「エレ!エレレ!!」
「お疲れ様、エレズン!頑張ったね!」
「う〜!!!」
「はい、オレンの実食べてね」
はエレズンにオレンの実を手渡すと、エレズンは喜んでそれを食べた。は戦闘不能になったギモーに歩みより様子を見ると、に気が付いたギモーはギロリと睨みつけて、地面を這いながら逃げようと後ろへ後退した。
「あ…待って、これ…食べて」
「ギギ!」
「大丈夫、何にも入ってないから」
はギモーの目の前に、ヒメリの実とオレンの実を数個置いてすぐのその場を立ち去った。モグモグとオレンの実を食しているエレズンを抱き抱えると、自転車のカゴに入れた。
後ろを振り返ると、まだ自分を睨みつけているギモーがいた。
「…ちゃんと食べてね!」
「エレ〜」
「……」
は自転車を緩やかに漕ぎ出した。きっとあそこに残れば、ギモーはいつまで立っても食べないだろうと直感で思ったからだ。
弱った野生のポケモンを放っておくのは心苦しいが、野生のポケモンに人工的な傷薬を使いたくなかった。きのみや薬草でなるべく自然のものでの回復が望ましいが、あまりに酷い傷だった場合は別だ。
先ほど戦ったギモーは見たところ、麻痺はしているがひどく弱った様子ではなかったとは判断してきのみを置いて立ち去った。
「あのギモーちゃんときのみ食べてくれるといいね」
「エレ」
「夜のなる前に早くこの森抜けたすぎる…こっちで合ってるよね、エレズン?」
「…エレ…」
「…」
はサッと血の気が引きつつも、大丈夫大丈夫と小言を言いながら前へ進んだ。