第11章 ラングラー
「聖臣には負けてらんねーからなー」
『聖臣くん?』
聖臣くんに負けてらんない、という言葉を古森くんから聞くのは
あまりいいたくない、あまり使いたくない言葉だけど、少し、意外だった。
「うん、聖臣。でも聖臣のお陰でリベロって道見つけたからな〜
ほんと、きっかけっていろいろだよな!」
そっか、古森くんは守備の上手いOHだったって、治くん言ってたな。
『聖臣くんがいたから、なんだね』
「聖臣ってさ、守備も上手いんだよ、当たり前だけど。
で、スパイカーとしてはご存知の通りあんな感じで。
トータルでは勝てないな、って思って守備で勝負しようと思って」
『なにと、勝負? 聖臣くんと?』
「いや、そういうわけでもないんだけど。自分との?って方が近いんだけど。
でもやっぱ聖臣の存在は、モチベーション上げてくれるかな」
『そっか… 9月の大会で対戦相手になるの、楽しみだね』
「だな! それにやっぱ、日本代表としてまた一緒にもできたらとは思うけど」
『……』
「俺らの一個上の音駒のリベロいたでしょ?夜久くん」
『夜久さん!』
「やっぱあの人、すごいんだよね〜 ここ一年ですっげーの」
『…夜久さんは、古森くんのことすごいって言ってた。高校の時』
進路の話、聞かせてくれて。
古森くんみたいな子は高卒できっとVリーグ行けるけど、的な。
でも結果夜久さんも高校卒業後Vリーグへ行って活躍してる。
…それからあの時、海外のチーム、ロシアとかでプレーしたいって言ってたな。
そんなすぐには起きないことだろうけど… いつかきっと叶うのかな。
いいな、叶っても叶わなくても。
みんなの夢を聞くのは、覗き見るのは、ひっそりと応援するのは良い。
「マジで!?すっげー嬉しい!もっと夜久くんと話す機会があれば良いんだけどな〜。
…角名は? オリンピックとか出たいって思うの?
チームメイトだけどそんな話なんないし、このタイミングで聞いとこっと」
にかーって笑って、軽く、でも軽すぎず、
古森くんの持つ絶妙な塩梅で、倫ちゃんに話が振られる。
倫ちゃんとオリンピック……
ちょっと想像つかない。
けど、もしあったら、信介さん喜ぶだろうなぁ…