第11章 ラングラー
ー穂波sideー
だんだんと夕焼けで空と海が染まってくなか、
ポータブルシャワーでサーフボードを綺麗に洗って。
わたしたちの髪や身体もざっと流して。
着替えてからみんなで並んで、何を喋るでもなく夕焼けを眺めた。
空気さえも染まっているようなあの感じ。
「流石に腹減った……」
治くんのこの一言にはみんな同感で、じゃあ帰ろっかってなって。
今、キャンプ場に帰ってきたところ。
ごはん食べて余裕があれば、12時過ぎてもやってる近くの温泉施設に入りにいこって。
まぁ入れなくてもまた明日海入るし… みたいなゆるさで。
オイルを塗ったとはいえ髪はギシギシだけど…そんなもんさ。
古森くんたちが炭を起こしてくれてる間に少しで早く食べれるものを。
コンロでご飯を炊く。お味噌汁はもう、治くんが仕込んでくれてるからあとで温めて味噌を溶くだけ。
「ほい、これどう?」
『…ん、ん! 美味しい♡』
治くんが鯛のマリネを口に入れてくれる。美味しい。
「そしたらこれは、この容器でええやんな」
『うん、いいと思う』
「…ん、ならこれも。 はい、あーん」
『あー…ん?』
タコのマリネを指で掴んで口元に持ってきてくれるんだけど、
治くんが…… 照れてる? 今更?
『…ん、美味しい♡ 治くんの塩加減は素晴らしいね』
「…おおきに。 …あかん、照れるわ」
『………』
そう言って耳から首まで赤くしてる治くんはかわいいけれど、
多少の今更感が否めない。 なぜ、今?
「はい、あーん ってなんなん。
口からでとって照れるし、そのまま口開けられるともっと調子狂うわ」
『………』
そんなこと前、蛍くんも… ってわたし、蛍くんのこと本当によく思い出すな。
そりゃそうだよね、だって蛍くんってば。
蛍くんってば、あんなに……
はぁ、どうしてこうも、この世界は魅力的な人で溢れてるんだろう。