第11章 ラングラー
ー古森sideー
穂波ちゃんは何回目かの波に乗り終えると岸まで来て。
それから両手を口元に持ってきて おーい! って。
みんなの表情や空気がふって緩む感じがした。
サーフボードを抱えてどんどん近づいてきて、
ここまで来るとリーシュっていう足につけるやつを外して、
『待ってくれてありがとう。気持ちよかったぁー♡』
って言った。
いつもの数割増しで色っぽくかわいく綺麗になってて、ちょっと怖いくらい。
この子海に入ると、か自然とつながると、こんな感じになるのかも。
…音駒の文化祭の時もそうだったな。
あれは自然の中ではなかったけど、その場にいるとそこが体育館であることを忘れ去れる感じがあった。
シャーマニックな何かがある感じ。
「………」
「………」
「……ぉ、ぉん」
「…ん、待ってないよ。 見てただけ」
『んふっ やっぱりサーフ帰りの研磨くんはたまらないなぁ〜』
俺と角名は言葉なんて出てこなくって、
治くんは、やっと声を出したって感じで、
研磨くんだけが、まともに喋った。
穂波ちゃんはもう研磨くんしか見えてないみたいな感じで、
研磨くんに飛びつくように抱きつく。
「……わ」
って小さな音を出して研磨くんは座ったまま後ろによろける。
ウェットスーツ、上半身は隠れてるけど、下はビキニみたいな露出具合だから、
研磨くんに跨るようにして抱きついてるその色々が…低刺激とは程遠い感じ。
すっと俺は立ち上がって、
治くんも角名もそれに続くようにして波打ち際まで向かった。
まぁ、帰る前にもう一回入りたかったし。
みたいな。
でもいつもみたいに、エロいね、とかいう言葉が出てこなくって。
多分みんな同じ感じ。
海から上がった穂波ちゃんの怖いくらいの綺麗さに、持ってかれてた。
静かに3人でなにをするでもなく海に足をつけて、時間を過ごす。