第11章 ラングラー
ー穂波sideー
別に男の子だけじゃなくて、いろんな女の子にも同じように感じる。
この子とのこういう時間がすき。
たまらなく好き、ってのがいっぱいある。
治くんとの買い物や食事や調理は本当に楽しくって、好きがいっぱいで。
それがこうやってわたしを好きって言ってくれてる人の場合、
タチ悪いよなぁって。 思わせぶりだよなぁって、ちょっと凹んだ。
古森くんは人の表情や空気にきっと敏感で、
すぐにそれを察してしまったみたいで、
でも、すっごくナチュラルに、空気を変えてくれた。
古森くんはどうこうしようっていうのがないから、本当、さっきもだったけど。
本当、そういうとこである。
ナチュラルにさらっと人の心を持ち上げる。掬い取る。
『じゃあ、急所は教えないでおこーっと』
「あ、そうだった、その話だったねー ちぇ、弱点知っとこうって思ったのに」
『んふ、ちなみに古森くんの急所は?』
「俺? 俺は普通に脇腹… って答えちゃったじゃん!」
『んふふ、脇腹、りょうかーい♡』
なんて、卵の殻はとうに剥き終わったんだけど、古森くんと話に花がさいちゃう。
「穂波ちゃん、元也くん、ただいまぁ! あ、卵剥いたんやな!」
「おー、治くん、研磨くんおかえりー」
『おかえりぃ』
「ん、ただいま」
「どこまで行ってきたの?結構ゆっくりしてたね」
「いやもう、あんなとこまで」
「え?」
「行くとこまでいってもーた」
「ちょっと治くん」
「なになに、どういうこと?」
いつのまにか倫ちゃんも輪に入ってて。
絶妙な感じで、会話に入ってくる。
「研磨くんってな… エッロいんやて」
「それ俺知ってる」
「俺も」
「なんでし、どーゆーことなん」
「ちょっと、変な話やめて」
『研磨くんの色気は…』
本当に勢いを増すばかりで、そっかぁ、みんなもう知ってるかぁ…
『…ほんと、たまらないよねぇ』
「え、なんなんもっと、探り入れてこんのかい。 にやにやにこにこしとるし」
『2人が仲良くなってる、前よりずっと。それだけはわかる。…だから』
「………」
『嬉しいなぁってなってる』