第11章 ラングラー
「あー!もうわからん!」
「わ… びっくりした。 治くんって時々…」
「………」
「大きい声出すよね」
「なにそれ、普通……」
「…?」
何言われるんかと思った。
大声くらい出すわ。
「研磨くんってなんなん」
「さぁ…」
「これからなにしてくん?」
「あ、治くんってどんな店やるの」
「俺、俺はな今のところな……」
なんやよくわからんけど、それから俺は将来のおにぎり屋。
穂波ちゃんとできたらええなーって思う、店の話を、研磨くんにした。
別に彼女が、結婚相手がおってもおらんでもする、店の話。
穂波ちゃんがおったらより最高やろな思う、店の話。
「へぇ…いいね。 おれ治くんの作るものすきだよ」
「だっ なんやそれ、ハリケーンか!?」
「…は?」
「いきなし研磨くんにすきとか言われると照れるわ!調子狂う!」
「さっきからずっと、調子狂ったり戻ったり繰り返してるんじゃないの」
「ぉん、まぁ、そうやけども! す、すき言うた?」
「うん、言ったけど。 あと、食べ物のこと治くんと話してる穂波がすき。
話したよ、とかいう報告も含め」
「………」
「だからとかはないけど、んーと……」
「…?」
「店始める目処が立ったら教えて」
「おん! 教えるわ、食いにきてな! 絶対やで?」
「ん、行く」
宣戦布告もなにも、結局夢の話になっとって、とんだハッピーエンドやなーって思いながら。
なんか、研磨くんってかっこええのとおっかないだけやなくって、
なんていうか…… いいやつやな、て思った。
人は人、自分は自分が、きっとベースのまたベースんとこにあるから、なんやろな。
周りが思うよりずっと、心が、器が広い。
それを研磨くんの中に受け入れるか否かは、研磨くんが決めることやけど、
それ以前の、良し悪しみたいなのとかそういうのは、ないっていうか。
まぁ結局、かっこええな、ってことにしとけばいいんやけど。