第11章 ラングラー
ー治sideー
いやだから、何で俺が宣戦布告されとん。
この研磨くんの、この感じは。
多分計算じゃなくて、本心で。
それから、ものっすっごい、圧力で負けを、感じさせる。
向こうが挑発してきよったら、こっちも乗ってまうけど…
そういうんとは似て非なるもんやから、
ほんま、どうしようもなく、
「かっこええな…」
そう思ってまう。
ツムやないけど、かっこええなぁ!って、思う。
何やろな、ドラマとかでよくある、あのドロドロから、
何の力みもなく一線を画してる。
ほんまのほんまの核心のとこで、信じてるみたいな。
真似できんくらいの信頼がある。
やから、ひとつもこっちに追い風が吹かん。
「なにそれ。 …でもおれ、治くんのこと」
「………」
うっわ、いきなり落とす感じくるんかな。
油断した…
何が続く?
シンプルに、嫌い か?
……ていうか、それしか思い浮かばんし。
「嫌いじゃないから」
「…きらい……じゃないん?」
「嫌いだったら、そうだね、確かに…… 殺しはしないけど消すくらいは、するかも」
どちゃくそおっかないこと言うてるんやけど。
ツムが言ってもなんも箔がつかんけど、
研磨くんが言ったらガチすぎてやばい。
やばいんやけど、くらっときてもーた。
綺麗な顔して、色気出して狂気じみたことさらっと言うもんやから。
「…おっかな …殺すと消すの違いは何なん?」
「そんなの言葉のままだよ、おれと穂波のいる世界から、消す」
「………」
「…ふ」
冗談なんやろ、おもしろがってんねやろ、わかってても…
その小さな笑みに血の気が引いてくわ。
ほんで俺、言いたいこと言えたんやっけ?
言いたいことってなんやったっけ?